武士

桔梗園

桔梗園店舗

名古屋港の発展とともに生きてきた
地元密着の和菓子魂

地下鉄名港線「築地口」駅の出口を出てすぐ隣にある店舗が、名古屋港エリアの老舗和菓子店・桔梗園である。歴史をよくよく聞いてみると、この辺り一帯でいろいろなビジネスを広く展開していた桔梗園は、かつて料亭や映画館なども運営していたのだそうだ。地下鉄名城線が名港線として延伸が決まった時に、昭和47年の地下鉄建設とともに桔梗園のビルも新たに建てられたのだろう。

明治元年生まれの初代は、明治中期に白鳥のあたりで和菓子屋を創業。2代目が引き継いでしばらくした時に、現在の場所へと移転した。名古屋港の開港が明治40年(1907年)であることを考えると、桔梗園の歴史は、名古屋港とともに歩んできていると言っても過言ではない。名古屋港に多くのモノ・コト・ヒトが集まるたびに桔梗園の和菓子もいろいろな人の手に渡り、甘い美味しさで忙しい人々の心を癒してきたことだろう。

「地域とともに」この考え方は現5代目主人の水谷光貴さんにもしっかり受け継がれている。取材でお邪魔した日も、ひっきりなしのお客様であふれ、それぞれに思い入れのあるお菓子を買って満足げに帰って行く姿がとても印象的だった。

髪を茶色に染めた“いかつい”姿の若者が1人、お店に入ってきた。一見すると和菓子とは結びつかないようなイメージだが、意外にも第一声は「いちご大福ひとつください」。彼が帰宅して1人でいちご大福をパクッとしているシーンを思い浮かべたり、あるいはお母さんやおばあちゃんに買っていったのかもしれないと想像をふくらませたり。桔梗園の美味しい和菓子が、この地域にしっかりと根を張り、人々に愛されていることを証明するシーンであった。

番頭さん

季節のお菓子

  • 草餅
  • 水ようかん
  • 亥の子餅
  • 築地どら焼き 銅羅 波照間黒糖(はてるまこくとう)
  • 草餅

    桔梗園の春のお菓子の代表格が、草餅。毎日大量の草餅が作られ、大量に購入していくお客様がいる。それが桔梗園の春の店先の風景である。もちもちした食感と、丁寧に炊かれた粒あんのバランスが程よい逸品。

    口の中でふわっと広がる宮城県産を中心の国産よもぎの香りは、春だなぁと思わせてくれる。自然に笑みがこぼれてやさしい気持ちになっていく。2月〜4月の商品。

  • 水ようかん

    和菓子屋にとって“こしあん”は命とも言える大切なもの。夏の水羊羹は、そのこしあんをそのまま冷たく固めたものなので、和菓子屋の自慢と自信がたっぷり詰まっている商品である。

    桔梗園の水羊羹ももちろん、当代が自信を持ってオススメしたい夏のひと品。口に入れた瞬間につるん、と溶ける舌触り。ギリギリまでやわらかくした、その食感は夏になったら是非求めたい。

  • 亥の子餅

    亥の子餅とは、旧暦の亥の月(新暦11月)の最初の亥の日の亥の刻に、イノシシの形をしたお菓子を食べる習慣から、現代でも秋に作られるお菓子のこと。茶の湯ではその年に摘まれた新茶で茶会をするためにお茶用の炉を開いて火を起こす炉開きがある。一般家庭ではこたつを出す時期なので、火災に遭わないようにとの願いが込められたもの。

    こちらの亥の子餅は、イノシシの子供かな?と思わせる可愛らしさが表現されており、味わいもバランスが良くてとても美味しい。

  • 築地どら焼き 銅羅 波照間黒糖はてるまこくとう

    どら焼きは桔梗園の名物の一つで大人気。当代主人がアイデアを凝らして新登場させたのが、西尾産の抹茶を使ったものと、沖縄・波照間の黒糖を使ったもの。

    ここでは黒糖バージョンをご紹介。黒糖のコクとこしあんの旨みが、ふわふわの皮とベストマッチ。ちょっと大人の感性で、リッチな味わいは、桔梗園の新たな新名物となりそう。


桔梗園

住所:名古屋市港区名港1-20-13 築地ビル1F
TEL:052-661-1448
営業時間:10:00~19:00
定休日:日曜日


周辺情報

周辺情報

桔梗園から見守る、名古屋港の歴史

桔梗園の店の前を左方向へ、南の方角へと視線を移すと、その奥に名古屋港ポートビルが見えてくる。名古屋港のランドマークである。つまり、桔梗園から名古屋港までは一直線。桔梗園から名古屋港までの一帯は、“名古屋港の街”として、港の発展とともにずっと存在してきたエリアなのだ。

名古屋港は、日本で最大級の港湾であり、港の陸地部分は日本一の広さを誇る。年間の総貨物取扱量や貿易輸出額などは常にトップランク。実は、名古屋及び中部圏の経済を牽引しているのである。

そして桔梗園をはじめとした地元の人々は、名古屋港によって発展したこの地域に対して誇りを高く持っている。夏に開催される名古屋港まつりには地元をあげて盛り上げる。お店の周辺で立ち寄ってほしいところは?と質問すると、5代目ご主人はごく当然、といった雰囲気で「名古屋港ですね、名古屋港ポートビルに登って見晴らしを楽しむのも良いし、水族館に行くのもいいし、ガーデン埠頭臨港緑園もおすすめです」とニッコリ。

小さい時から名古屋港を遊び場にして育ってきたご主人ならではの一言だった。築地口に出掛けたら、桔梗園でお菓子を買って、のんびりお散歩気分で名古屋港まで歩き、和菓子ピクニックと洒落ましょうか。

アウトドア女子

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