武士

小ざくらや一清

小ざくらや一清店舗

商品アイテムは2000種以上の
和菓子天国。

小ざくらや一清は、創業明治45年(1912年)、100年をゆうに超える老舗である。現在の店主で4代目と聞き、代々受け継がれた技術はなにか?と尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「うちは代がかわるごとに作るお菓子がかわりました。初代は羊羹や最中など生菓子を、2代は冠婚葬祭の式菓子の職人でしたが急逝。3代は映画の看板製作の仕事をしていて受け継ぐ時間がなく、独自で修行をして干菓子をはじめた。わたし4代になってからは父の希望もあり、生菓子に挑戦しました」

和菓子職人の心は受け継がれているが、作るものが時代によって変化しているとは!4代それぞれが全員創業者のようなチャレンジ精神でやってきたのだろう。店主の語りから、みなぎるエネルギーを感じた理由はきっとそこにあるのだと思う。俄然、現在の和菓子づくりに対する考え方を知りたくなる。

「うちには現在、和菓子職人が8人います。いつも言っているのは、流行に乗るな、誰にも真似できないお菓子を作れ、ということです。毎年社内で新商品コンテストをおこなっていますが、面白いものばかりなので、出品した全員分をいつも商品化しています。だからうちのお店の商品アイテムは気がついたら2000種以上になっちゃった(笑)。常時店頭にあるだけでも200種くらいはあります」

商品を見ていると自然とワクワクしてくるのは、和菓子を作ることが楽しくて仕方がないという作り手の思いが、お店じゅうに宿っているからなのだ。和菓子好きにとっては、まさに天国のような品揃えである。

番頭さん

季節のお菓子

  • おほほっ苺
  • すいかどろぼう
  • おほほっ無花果
  • 黒柿
  • おほほっ苺

    季節の果物をまるごと包み込む大福は、お店の看板商品として大人気。中でも春のいちごは平成28年(2016年)の全国苺大福ランキングでベスト10に入ったほど。

    愛知県愛西市のいちご「ゆめのか」に惚れ込み、農家と専属契約を交わしたというエピソードからも、素材への審美眼を感じる。

    朝とれたいちごを大福にして店頭へ。「ゆめのか」独特のやさしい酸味とぴったり合う白餡を、やわらかな羽二重餅が包みこんでいる。

  • すいかどろぼう

    なんとかわいいお菓子だろうか。そして思わずくすっと笑ってしまうネーミング。

    スイカは水分が多いのでお菓子にするのは非常に難しいと言われている素材。何度も失敗を繰り返し、けれどあきらめずに絶対に作る!と決めて挑戦すること数年。スイカの餡が完成したので、とうとう商品にすることができたのだとか。

    子供の頃に聞いたスイカ泥棒の話題を思い出して商品名にしたところ、評判が良いのだそうだ。

  • おほほっ無花果

    9月の約1ヶ月だけ販売される。「おほほっ」シリーズの中でも、特に人気が高い商品で、広島県尾道市の白いちじくを使ったもの。いちじくを用いる和菓子は多くあるが、白いちじくに限っている商品は、他では見たことがない。

    白いちじくは「蓬莱柿」という品種で、皮ごと食べられるもの。いちじくの鮮度をなにより重視し、皮ごとを羽二重餅で包んでいる。

  • 黒柿

    やわらかな市田柿に栗きんとんを詰めたもの。契約農家には、肉厚の市田柿をオーダーしているとか。

    甘くねっとりとした市田柿を噛み締めると、中から風味豊かな栗きんとんが現れる。口の中で、栗と柿の旨味が相乗効果のように複雑にからみあう。

    栗も好きだけど柿も好きという人にとっては、垂涎の逸品。12月と1月の限定商品。


小ざくらや一清こざくらやかずきよ

住所:名古屋市中村区草薙町1-89
TEL:052-412-4014
営業:9:00~18:00
定休日:日曜、第3月曜日
URL:http://www.kozakuraya.com/
SNS:


周辺情報

中村公園

秀吉から清正、歌舞伎役者まで、
人気者が勢揃いの街。

地下鉄東山線「中村公園」駅で降りて、高さ24mの大鳥居をくぐって参道をゆくと、なんとも懐かしい気分になるのはなぜだろう。どこか昭和の名残を感じる街並みだからなのか。

参道を途中で左に折れると、小ざくらや一清だが、まっすぐ進むと、中村公園に行き着く。中村公園は名古屋市営の都市公園で、日本庭園や茶室、中村公園記念館をはじめ、歌舞伎役者の初代中村勘三郎生誕の地という説から建てられた勘三郎の記念像、大正天皇お手植えの松、など、見どころがたくさんある。

広い日本庭園の中の池のほとりに、木陰のベンチで休む人々が、それぞれに読書をしたり会話を楽しんだり、中にはお昼寝している人もいた。筆者も真似して座ってみた。すると水際だからなのか、真夏日にもかかわらず、汗ばんだ顔をなでるように涼しい風が吹くではないか。地元の人がここに集うのもわかるなぁと独り言を言いながら、立ち去りがたい思いで公園を後にした。

中村区といえば、豊臣秀吉、加藤清正の出身地と言われている。歴史マニアが時折訪れてまち歩きを楽しんでいるのだそうだ。所々に歴史上の人物に関する看板も設置されており、のんびり散策するにはちょうど良いサイズ感の街でもある。中村公園をベースにして、プチ歴史旅など、いかがだろうか。

大正はいからさん

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